寝ているあいだの病気

睡眠時ブラキシズム

 ブラキシズム(口腔内悪習慣)は、以前取り上げた「歯ぎしり」「食いしばり」「噛みしめ」といった癖の総称で、寝ているときに無意識にしてしまうのが、今回の睡眠時ブラキシズムです。
寝ているあいだの病気 睡眠時ブラキシズム 歯の摩耗、歯周組織の損傷、歯がグラグラになる、被せものが欠けたり、取れたりする、顎関節症、耳鳴り、睡眠障害、頭痛、肩こり、自律神経失調症…ブラキシズムから広がるトラブルはさまざまのものが考えられるので、見過ごせません。
 「寝ているあいだ」という点がやっかいで、まず、寝ているあいだのことなので自分では気づきにくいです。一緒に寝ている人があれば、指摘してくれることもありますが、一人で寝ている人は指摘されませんし、音を立てずに食いしばっている場合もあります。自覚症状がでるとすれば、朝起きた時の歯や顎の疲労感や痛みなどなので、そのような症状が思い当たるときは、要注意と言えるでしょう。
 また、寝ているあいだということで自発的に止めることも難しいです。ですから対処法としては、歯や顎を保護する目的でマウスピースを作って着用するという方法をとることも多くあります。まだ完全にその原因やメカニズムは解明されていませんが、ブラキシズムは、ストレスと、あごの筋肉の緊張のアンバランスがあるとき…虫歯などで歯が痛いとき、高さの合わない被せものがあるとき、噛み合わせが悪い…が大きな原因とされているので、それらを取り除く努力も大切になります。
 さらにもう一つ寝ているあいだならではの現象があります。私たちは起きているときは、歯へのダメージを考えて、自然に噛む力を調節しています。ところが寝ているあいだだとこの抑止力が効かないため、睡眠時ブラキシズムでは通常の何倍もの力で噛んでしまうと言われています。場合によってはクルミの殻を割ってしまうほどの力で圧力をかけていることもあるとされていますので、その破壊力を想像できると思います。
 症状の程度の差こそあれ、年齢や性別を問わず、半数近くの人がなっているともいわれる睡眠時ブラキシズム。多くの人は知らないうちにしていることも考えられるので、歯ぎしりを指摘されたり、朝の口腔周りの疲労感や痛みを多少とも感じたら、一度歯科医院を受診するとよいかもしれません。